インプラント

インプラントはどんな時に必要?

歯科では人工歯根を「インプラント」と言います。歯を失った場合に、昔は入れ歯やブリッジを入れる方法しかありませんでした。しかし、現在では「インプラントを顎の骨に埋めて、その上に歯を立てる」という第三の治療法が出てきたことにより、入れ歯やブリッジの様々なデメリットを克服できるようになりました。インプラントは最近人気が高まってきている治療法なので、新しい治療法だと思われて「実際うまくいくのだろうか?」と疑問視する人も多いようですが、実はもう数十年も行なわれている歴史の古い治療法です。そのため、改良に改良が加えられており、治療の成功率や安全性も高い治療法なのです。

歯がなくなった時に放置するとどんな危険が?

歯がなくなった場合、放置するとどのようなことが起こるのでしょうか。多くの人は放置してもずっと隙間があいたままその状態が続くと思っています。しかし、実際お口の中では日に日に様々な変化が起こってきます。例えば次のようなことです。

周囲の歯が移動し始める

歯が1本なくなると、隣の歯が倒れたり移動してきます。また、それまで噛んでいた歯も噛み合う相手を求めて出て徐々に伸びてきます。

噛み合わせが崩れてくる

周囲の歯が移動することで、噛み合わせがだんだんと崩れ、おかしくなってきます。

歯がどんどん悪くなる

歯が抜けた方で噛めなくなると、反対側ばかりで噛むようになります。すると、噛んでいる側の歯ばかりに負担がかかるようになり、歯を傷めてしまう原因になります。また、噛み合わせが崩れてくることで、噛んだ時に強く当たる歯とそうでない歯が出てきます。すると強く当たる歯には歯周病が進みやすくなったりするなどの不具合が生まれ、歯はどんどんと悪くなってしまいます。

見た目が悪くなってくる

抜けて隙間のあいた部分に向かって歯が移動し、見た目が悪くなることがあります。また奥歯がなくなると、それまで奥歯で支えていた力が前歯にかかるようになります。そうすると、前歯に力がかかりすぎるようになってしまい、前歯の隙間ががだんだん開いて、出っ歯になってきます。これをフレアーアウトと呼びます。さらには左右で均等に噛めないと、噛めない側に法令線が出るなどの変化が起こってきます。

顎関節症が起こる

噛む筋肉がバランス良く働かなくなることで、顎の筋肉や顎の関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こします。顎関節症を発症すると、顎や口の周りの筋肉が痛んだり、口が開きにくくなったりというようなことが起こります。

体のあちこちが痛み始める

顎の筋肉は体の筋肉とも繋がっています。そのため、周囲の筋肉まで緊張してしまい、頭痛や肩こり、首の痛み、腰痛など様々な部分に痛みを出すことがあります。

いざ歯を入れようと思った時に困る

歯を抜いて放置したままにしていると、歯が大幅に移動してしまい、いざ歯を入れようと思った時にそのままではスペース不足で歯が入れられなくなります。その場合、歯を入れられるようにするためには、「移動してしまった歯を大幅に削って被せる」「矯正治療をして歯の位置を元に戻す」というような処置が必要となります。

インプラントのメリット、デメリットは?

インプラントは素晴らしい治療ではありますが、やはりデメリットというものもあります。メリット、デメリットともに見ていきましょう。

メリット
  • よく噛める
  • 見た目が自然
  • 違和感がない
  • 外したりする面倒さがない
  • お手入れがしやすい
  • 周囲の歯を傷めず治療できる
  • 手入れ次第では長期間持たせられる
デメリット
  • 保険がきかないので高額
  • 治療開始から終了まで数ヶ月を要する
  • 手術の合併症が起こる場合がある
  • 骨の状態や体の状態によってはできないこともある
  • きちんとお手入れをしなければ抜け落ちてしまう

歯がなくなった時の対処として入れ歯、インプラント、ブリッジがありますが、それぞれの特徴を教えて下さい

入れ歯の特徴

入れ歯の最大の特徴は「取り外し式である」ということです。この特徴は長所にも短所にもなりえます。取り外せる長所は「手に持って洗えるので清掃がきれいに行える」ことで、短所は「つけた時の違和感」「外れてしまうことがある」といったことがあります。また歯が数本なくなった場合、部分入れ歯にすると、入れ歯を支えるために残っている歯にクラスプと呼ばれるバネがかかります。そのバネが場所によっては見えるので審美的に問題が出ることがあります。入れ歯には保険のものと自費のものがあります。

インプラントの特徴

インプラントは「自分の歯のように噛める」「見た目が自然である」ことが特徴です。周囲の歯に負担をかけることもありません。自分の歯のようにお手入れすればいいので、清掃方法も工夫が入らず、簡単です。ただ、清掃をしっかり行わないと、歯周病原菌による感染が起こり、骨が溶けてインプラントがダメになってしまいます。インプラントは全て自費となります。

ブリッジの特徴

ブリッジは、歯がなくなった両隣の歯を削ってそれをつなぐように被せるのが特徴。そのため「健康な歯を削る」「支える歯に負担がかかる」という難点があります。固定式なので入れ歯のように外す煩雑さがなく、違和感もそれほどありませんが、清掃がしにくいという欠点があります。保険のものと自費のものから選べます。

インプラントのメリットは?

それぞれの治療法を総合的に見てみると、インプラントのメリットとして次のようなことが挙げられます。

  • 自然な見た目と噛み心地が得られる
  • 違和感がない
  • 他の歯に負担がかからない
  • 固定式なので食事中などに外れることがない
  • 清掃がしやすい

インプラントが出来ない人もいる?

インプラントは外科手術を行うため、次のような全身的な病気がある人はできない場合があります。

糖尿病
感染を起こしやすく、傷の治りが悪い
高血圧
血が止まりにくく、脳梗塞などの合併症を起こす危険性がある
心臓病
心臓発作を起こしたり、ペースメーカー使用中の人は心内膜炎を起こす危険がある
骨粗鬆症
骨粗鬆症の治療薬の影響で、外科手術をすると骨が壊死してしまうことがある
腎臓病
血が止まりにくく、傷の治りが悪い
肝臓病
血が止まりにくくなる危険性がある
癌の治療中
顎の骨に放射線治療を受けている場合、骨の治りが悪い場合がある

インプラントの手順は?

インプラントの手術の方法には大まかに「一回法」と「二回法」の2通りあります。一回法は手術が1回、二回法は手術が2回必要となります。現在のところ、感染のリスクが低く、あらゆるケースに対応できることから一般的には二回法が採用されます。それぞれの手順は次の通りです。

一回法

  1. 歯茎に麻酔をした後、歯茎を切開して骨に穴を開ける
  2. アバットメント(土台)が一体になったインプラント体を骨に埋め込み、アバットメントを露出させた状態で歯茎を閉じる
  3. インプラントと骨が結合したのを確認し、型を取り、被せ物を取り付ける

二回法

一次手術

  1. 歯茎に麻酔をし、歯茎を切開して骨に穴を開ける
  2. インプラント体を骨に埋め込み、歯茎を縫合してインプラント体を完全に覆う
  3. 骨とインプラント体が結合するのを数ヶ月ほど待つ

二次手術

  1. 歯茎を切開し、インプラントを露出させる
  2. インプラントにアバットメントを装着する
  3. 歯茎を切開した部分が治ったら型取りをし、被せ物をする

インプラントに関して気をつけること

インプラントは自分の歯のような感覚で使えるという大きなメリットがあるものの、人工物を自分の体に埋め込み「体の一部」とする治療なので、インプラントの状態に生活習慣や体のコンディションなどが影響しやすいということを覚えておく必要があります。例えば、歯磨きがきちんとできずにお口の中が不衛生であったり、喫煙をしていたりすると、自分の歯と同様、歯周病のリスクが高まり、短期間でインプラントを失うことになりかねません。また全身的な病気が原因で手術自体が受けられなかったり、仮にインプラントを埋め込めたとしても、病気の影響で早期にインプラントがダメになってしまうこともあります。インプラントを長持ちさせるには生活習慣を正して、お口の中の健康、体の健康に気を配っていくことがとても重要です。